茨城県 結城紬

 結城紬の歴史

奈良時代に朝廷に上納。
振興・改良を重ね現在に至る

高級絹織物「結城紬」の歴史は、第75代天皇である崇徳天皇の時代にまで遡ります。当時、多屋命(おおやのみこと)という人物が現在の岐阜県から茨城県の久慈郡に移り住み、太い生糸(きいと)で織った絹粗布「長幡部絁(ながはたべのあしぎぬ)」という織物を始めました。それが茨城県の結城地方に伝わり、結城紬の原型になったと伝えられています。結城地方は、古くから養蚕業が盛んで、農閑期に副産物の利用として紬を製作。奈良時代には、すでに朝廷に納めており、室町時代には結城家から幕府・関東管領へも献上されたことから「結城紬」に。江戸時代には、幕府の代官・伊奈備前守忠次が結城紬の振興、改良に務めた結果、「結城縞紬」として全国に知られるようになりました。昭和31年に「重要無形文化財」、昭和52年に「伝統的工芸品」に指定された後も、産地の人々の努力で高品質を保ちながら、古来の製法を守り生産が続けられています。

 結城紬の魅力

多彩な柄、軽く柔らかな肌ざわり
昔と今のトレンドが模様に生きる

撚(よ)りのかかっていない糸を原料にするため、真綿が空気をたくさん含み、とても軽い結城紬。真綿に包まれたかのようにやわらかな肌ざわりに加えて、しわにならないということも大きな魅力。一度、結城紬を手にすると手離せなくなると言われるほど、高い機能性を誇ります。絹でありながら木綿織風の素朴さもうかがえる結城紬は、伝統を生かしつつ、時代の変化・トレンドにあわせて工夫してきた模様も特徴的。昔ながらのシンプルな縞模様や亀甲柄、格子柄、七宝柄、そして古典的な柄を組み合わせた新しいものまであり、多彩な柄が目を引きます。また、淡い色や爽やかな色あいの地の色も大変美しく、目も楽しませてくれます。

 結城紬ができるまで

すべてが手作業。昔ながらの
機織り機で織り上げる

一枚の袋状の真綿を作り、「つくし」という道具に真綿を巻きつけて、手でつむぎ桶に糸を入れていきます。次に、桶のつむぎ糸を糸車で管に巻き、糸を一定の長さにするため、かせあげ器に巻きつけます。その後、絣(かすり)の柄となる部分に染料が染みこないよう、絣糸を綿糸でしばる絣括り(かすりくくり)や、結城紬独特の染色法「たたき染め」の工程を経て、1500年前から変わらない国内最古ともいわれる機(はた)織り機で織り上げます。機織りは、早い人で1反織るのに約1カ月、高級品になると1年以上かかる場合もあるそうです。これらの工程は、すべて手作業で、糸紡ぎ、絣括り、いざり機(はた)による機織りの3工程は、重要無形文化財に指定されています。

主な産地・拠点 茨城県 栃木県
このワザの職業 織物職人 染付職人
ここでワザを発揮 着物地、帯
もっと知りたい 伝統工芸 青山スクエア
Yuki-tsumugi, silk fabric production technique(動画)