羽越しな布の歴史
平安時代に貢物として活用。
庶民の身近な生活用品に
日本では縄文・弥生時代より、山地に自生する科(しな/落葉高木)、楮(こうぞ/落葉低木)、藤(ふじ/落葉つる性木本)を利用した布や装飾品をつくってきました。羽越しな布の起源は不明ですが、記録に登場するのは平安時代の「延喜式(えんぎしき)」。信濃地方を代表する貢物として記されているのです。奥深い山間部でも科が生育することから、当地域で発展したと考えられています。その後、衣類、袋、漁網といった生活用品に使用され、今ではカバン、帽子、帯などの時代のニーズを捉えた羽越しな布が生産されています。
羽越しな布の魅力
頑丈で、水に強い。
粗々しさの中にある素朴な温もり
羽越しな布が、一般的な織物と異なるのが素材。絹や綿ではなく、山間部に自生する科などの樹皮から採取される靱皮(じんぴ)繊維を用いて、糸を作り織り上げます。天然素材の素朴な肌触りが特徴で、水に強く丈夫。特に帽子は通気性・吸水性が高く、夏場は重宝れています。また、ほとんどの工程が手作業。職人の手によって生産される羽越しな布は、人のぬくもりを感じます。東北地方の厳しい自然環境と職人の愛情が融合させることで、羽越しな布を生みだしているのです。
羽越しな布ができるまで
20以上の工程を手作業で。
厳しい自然環境がつくる丈夫な科
原料となる科の外皮を剥ぎ、乾燥させます。その後、水につけ皮を巻き、木炭やソーダなどを入れてで約10時間煮ます(しな煮)。水洗い後、川で竹棒や石でこいていきます(しなこき)。次に、米ぬかと水に2昼夜漬け込み(しな漬け)。乾燥させ、指で細かく裂きます(しな裂き)。そして、しな糸をよりこんで、長い糸に(しな積み)。さらに糸車で、糸によりをかけます(しなより)。整経したしな糸を、いざり機や高はた機といった伝統的な機織り機で、手織りして完成です。
主な産地・拠点 | 山形県 新潟県 |
このワザの職業 | 織物職人 |
ここでワザを発揮 | 帯、小物 |
もっと知りたい | 関川しな織協同組合 羽越しな布(東北経済産業局) |