桜島と錦江湾を望む名勝 仙巌園で、
薩摩藩の歴史と鹿児島の文化に触れる。
明治日本の産業革命遺産にも
登録された見所たくさんの施設
JR鹿児島中央駅から、観光名所を巡るバス「カゴシマシティビュー」に揺られること約50分。悠然と煙を吐く桜島を目前に望む「名勝 仙巌園」に辿り着きます。仙巌園は、江戸時代初期の万治元(1658)年に、島津家19代・光久によって築かれた薩摩藩主島津家の別邸です。桜島を築山に、錦江湾を池に見立てた庭園は、数ある大名庭園の中でも群を抜くスケール。そして、この仙巌園に隣接する地には、島津家28代・斉彬が、他に先駆けて近代化・工業化に取り組み設置した、日本最初の工場群「集成館」の遺構が残されています。仙巌園、尚古集成館一帯を含むエリアは、2015年7月に世界文化遺産「明治日本の産業革命遺産」に登録されており、国内外から多くの観光客が訪れています。歴史的な建造物を見学できるだけでなく、伝統文化や伝統工芸に触れられる施設も充実しており、鹿児島を訪れた際には、ぜひ立ち寄っていただきたい、編集部おすすめの施設。その魅力を、ご紹介いたします。
反射炉跡などから伝わる、
斉彬の日本の近代化への思い
仙巌園の正面入り口を入り、正面に見えてくるのが「反射炉跡」です。反射炉は鉄を溶かして大砲を造る施設。当時は、オランダの技術書の翻訳版を参考にして建設が行われたそうです。現存する2号炉の下部構造は、薩摩在来の石組み技術で精密に組むことで建造されており、当時の石工職人の技術の高さを垣間見ることができます。斉彬により展開された集成館事業は、造船、造砲、ガラス製造、紡績、写真、電信など多岐にわたりました。慶応元(1865)年に竣工した「集成館機械工場」の建物は、現存する日本最古の石造洋式機械工場で、ここでは洋式機械や蒸気機関を用いて、船舶整備用の部品などを製造していました。現在は博物館・尚古集成館として建物を活用していて、工場操業時の雰囲気を醸し出す機械や、島津家と海とのつながりを示す船の模型などを見学することができます。
海外の要人も足を運んだ、
歴代藩主が愛した別邸「御殿」
「反射炉跡」を後にして歩みを進めると、薩摩藩主島津家の別邸が現れます。江戸時代初期の万治元(1658)年に島津家19代・光久によって築かれたのち、数百年の歴史の中で、建て直しや増築が重ねられてきた「御殿」。島津家歴代藩主がこよなく愛し、幕末以降は国内外の賓客をもてなす施設としても用いられてきました。和の趣の中に置かれた西洋風の調度品や、「風水」を取り入れた中庭などから、島津家の暮らしが伝わってきます。
体験コーナーで
気軽に鹿児島の文化に触れる
仙巌園では、鹿児島の文化を身近に体験することもできます。「着付・着装体験」では、島津家ゆかりの鎧兜や小袖五衣などの着付・着装が体験できます。また伝統文化の体験では、薩摩切子のカット、薩摩焼の絵付、切子のかけらを使ってアクセサリーなどを作る体験や、戦国武将たちが宴会の余興として行った記録が残る「四半的(しはんまと)」という弓矢の体験も用意されています。体験時間の目安や料金については、公式WEBサイトに詳細がありますのでご確認ください。
また、薩摩切子など鹿児島県の伝統的工芸品や芋焼酎なども、「仙巌園ブランドショップ」に豊富な品揃えで用意されています。中には、ここでしか購入できない限定品もありますので、旅の締めくくりに立ち寄られてはいかがでしょうか。