岩手県 浄法寺塗

 浄法寺塗の歴史

漆器作りの技術を
僧侶が持ち込んだのが起源

浄法寺塗奈良時代に僧侶・行基(ぎょうき)が、浄法寺町(現在の二戸市)に天台寺を建てる際、中央(奈良)から派遣された僧侶が漆器作りの技術を持ち込んだのが「浄法寺塗」の起源と言い伝えられています。現在、国内漆の6割以上を産出している二戸市は、もとより良質な生漆が豊富に採れ、町の発展に寄与。江戸時代にはこの地方を支配していた南部藩の重要な産物になっていました。その後、浄法寺塗は天台寺周辺や隣町の安代町付近で産地を形成。庶民には「御山御器(おやまごき)」の名前で、大名には「南部箔椀(なんぶはくわん)」の名前で知られるように。普段使い出来る気取らない趣から多くの人に使われる漆器として発展していきました。

 浄法寺塗の魅力

手に馴染むなめらかな質感。
光沢をおさえた奥ゆかしい美

浄法寺塗良質の漆を使った、しっとりと手に馴染むなめらかな質感、そして光沢をおさえた無地の朱・黒・溜色(ためいろ/別名:小豆色)の単色が最大の特徴です。基本は無地単色ですが「漆絵」や「粉蒔絵」、「南部箔絵」による加飾が施された品も中にはあります。また、「用の美を備える」と評されるように、簡素で奥ゆかしい風情が漂う浄法寺塗は、長い間使うことでその美しさを増していきます。こうした一方で、昔から汁椀・飯椀・盆・小皿・花器など暮らしの中で使われる漆器が多く作られてきたことも特徴で、古くから庶民に愛されてきた漆器ということがうかがえます。

 浄法寺塗ができるまで

乾燥時の収縮を計算し木地制作。
塗りは、刷毛跡を残さないように

浄法寺塗ができるまでトチやケヤキなど、木地となる木の木目を見て、制作する漆器の種類を決め、その寸法に近い大きさに成形していきます。つぎに、乾燥時の収縮や割れを計算しながら、ろくろで荒くかたどったのち、乾燥に移ります。乾燥後、完成品より多少厚めに削って材料のひずみをとり、サンドペーパーで木地をよく磨いたら、これに生漆を刷毛(はけ)でたっぷりと塗り、木地を固めていきます。さらに、木地の表面をなめらかにするための塗りを施し、その上に砥の粉(とのこ)と生漆を混ぜたものを塗り、表面がなめらかになるまで研ぎ、下地を作ります。そこに刷毛の跡やほこりが一切付かないよう慎重に仕上げの漆を塗り、そのまま乾燥させる「花塗(はなぬり)」、または、仕上げの漆を塗ったあと表面を磨く「ろいろ塗」を施し、完成となります。

主な産地・拠点 岩手県
このワザの職業 塗師 木地師(漆器)
ここでワザを発揮 椀 皿 盆 茶器 花器
もっと知りたい 漆の滴生舎