石川県 輪島塗

 輪島塗の歴史

強さと美しさを兼ね備えた、
日本の代表的漆器

輪島塗輪島塗で最も古いものは、輪島市内にある重藏神社の「朱塗扉(しゅぬりとびら)」で、室町時代のもの。江戸時代には既に全国の農家や商人の家で使われていました。明治時代になると、 蒔絵(まきえ)や 沈金(ちんきん)といった豪華な加飾(かしょく)も付けられ、料理屋や旅館でも使われるように。この輪島塗は、塗師屋(ぬしや)が自分でつくりあげた輪島塗を背中に、全国の客を一軒一軒回って販売する行商の形で広まりました。直接、客の厳しい目にさらされながら、品質に磨きをかけていったのです。使い回しの激しい料理屋や旅館との取引は、美しさはもちろん、丈夫さを兼ね備えていなければ続けていくことはできません。堅牢さが評価され、さらに傷んだものがあれば「なおしもん」(修理)をするというアフターケアの充実で信用を築いてきたのです。

 輪島塗の魅力

丹念な塗りと加飾で、
美しさを演出

輪島塗輪島塗は、傷んだものでも修理して塗り直すことで、新品同様に生まれ変わり、世代を超えて長く使用することができる、エコで優れた道具です。大きな特徴は、輪島で採れる「地の粉(じのこ)」と呼ばれる珪藻土(けいそうど)の一種を下地の漆に混ぜること。これにより堅牢さが増します。この下地を何層にも塗り、さらに「布着せ(ぬのぎせ)」をして補強し、中塗り、上塗りをして、磨き上げます。これだけでも十分美しいのですが、輪島塗ではこれに加えて蒔絵や沈金などの加飾を施すものもあります。輪島では、こうした加飾の名工を数多く輩出。人間国宝も生まれています。また輪島塗自体も昭和52年4月25日国の重要無形文化財に指定されました。現在、輪島には数多くの漆芸作家がワザを競い、より自由な発想で表現する作家も増えてきています。

 輪島塗ができるまで

高度に専門化した職人の分業で、
高品質な漆器を生み出す

輪島塗ができるまで輪島塗の工程はいくつかに分業され、それぞれの職人が高度な専門性を発揮しています。まず、どのような商品をつくるのか決めるのは、プロデューサー役の塗師屋。直接聞いた客の声などを参考にプランニングします。決まったらまず、木地師に木地の製作を依頼。できあがった木地は下地塗へ。ここでは一辺地、二辺地、三辺地と塗っては乾かし、研ぐ、という工程を何度も繰り返し、緻密で丈夫な塗肌をつくります。弱い部分は布を貼る「布着せ」で補強されます。中塗りをし、きれいに拭き上げた次は、上塗職人によって美しく塗り上げられます。さらに加飾されるものは蒔絵師や沈金師に託されます。蒔絵は漆で模様を描き、金や銀の粉を蒔き付け、さらに漆で塗り固めるなどした後に、研磨して金銀の光沢を表します。沈金はノミを使って模様を彫り、薄く漆を塗り込んだ後、金銀の粉や箔(はく)を模様に押し込み定着させます。加飾にはこの他に、漆をすり込みながら繰り返し磨き、鏡のような透明な艶(つや)を出す「呂色(ろいろ)」などもあります。こうしてその道その道の職人の手を経て、それぞれのこだわりを形にしつつ、ひとつひとつの輪島塗ができあがっていくのです。

主な産地・拠点 石川県
このワザの職業 塗師 木地師(漆器) ろくろ職人 呂色(蝋色)師 蒔絵師 沈金師 研ぎ職人
ここでワザを発揮 什器、装飾品、家具
もっと知りたい 輪島漆器商工業協同組合
輪島輪島漆芸美術館