雲州そろばんの歴史
地産を活用して大工が製作し
二大そろばん産地のひとつに
江戸時代後期の1832年、島根県仁多(にた)町の大工職・村上吉五郎が、広島のそろばんを参考に地元でとれる樫(かし)、梅、煤竹(すすたけ)を用いて作成したのがきっかけです。当時、そろばんは貴重品でしたが、製鉄の産地として栄えていた仁多町・横田(よこた)町には、多くの行商人が往来しており、高級なそろばんに触れる機会がたくさんありました。また、高い製鉄技術が生んだ良質な刃物によって、硬いそろばんの材料である珠の加工が容易に。こうした様々な背景により、雲州そろばんが誕生したのです。その後、横田町の職人が珠を削る手回しろくろを開発して大量生産体制に。今では、二大産地(ほか、播州そろばん)のひとつとして、国内の約70%を生産し、「そろばんといえば雲州」の名声を得たのです。
雲州そろばんの魅力
珠をはじく際の心地よい音など
一丁一丁に職人の魂がやどる
そろばんで一番重要だといわれているのが、珠(たま)です。現在、雲州そろばんの珠の材料に、そろばんのスタンダードである樺(かば)、緻密で重硬な黄楊(つげ)、高級感漂う黒檀(こくたん)などを使用。どの珠も、はじいた時の動き、音が良く、長く使うほどに使いやすくなります。これが、雲州そろばんは良質だといわれる所以です。また、雲州そろばんの製造は、実に187工程にのぼります。ほとんどをひとりの職人が手作業でつくるため、一丁一丁に職人の名が刻まれているのも特徴。職人が多くの工程を経てつくる雲州そろばんは、まさに名品です。
雲州そろばんができるまで
全187工程、すべて職人ワザ。
何十年も同じ道具を使う
雲州そろばんの作業工程は、全187。ほとんどが手仕事で、職人のワザがすべての工程に託されます。製造は、珠、軸、枠といった部分をつくり、それぞれを組んで完成です。珠には樺、黄楊、黒檀、柞(いす)を、枠には黒檀、特殊強化木、軸には煤竹、加工竹を使用。いずれも十分に乾燥させた、狂いのないものが採用されます。職人は材料のほか、道具にもこだわります。鉋(かんな)の刃も、自分で研磨。職人歴が道具歴といわれるほど、何十年にもわたってひとつひとつの道具を大切にしています。
主な産地・拠点 | 島根県 |
このワザの職業 | 算盤づくり職人 |
ここでワザを発揮 | そろばん |
もっと知りたい | 雲州算盤協同組合 雲州そろばん協業組合 |