小田原漆器の歴史
挽物の器に漆を塗ったのが起源
北条氏が漆器職人を招き、発展
一説によると小田原漆器の起源は、室町時代中期に箱根山系の豊富な木材を使って作られる挽物の器に、漆を塗ったのが始まりとされています。室町時代後期には、この地方を治めていた北条氏が小田原漆器を発展させるため、漆器職人を城下に招いたことで彩漆塗(いろうるしぬり)の技法が広められました。ちなみに、当時作られた名椀「芹椀(せりわん)」は、北条一族の菩提寺である、早雲寺(箱根湯本)に所蔵されています。その後の江戸時代以降は、椀などの日用品から武具などにわたるまでつくられ、その実用性が広く多くの人々に愛されました。
小田原漆器の魅力
木目模様を活かした自然な美しさ
丈夫で使うほどに手に馴染む
漆器と聞いて、朱や黒に覆われた厳かなものを想像する方も多いと思いますが、小田原漆器は一味違います。それは、自然の力強さを感じられる木目模様を活かしているという点や気取らない趣であるという点です。こうした自然の木目そのものの美しさを全面に出せるのも、脈々と受け継がれてきた高度な「挽き」と「塗り」の技術があるからといえます。それ以外にも、特徴はあります。たとえば、毎日の使用に耐える丈夫さや、使うほどに手に馴染むなどの経年変化です。このように漆器の中でも異なる趣からファンも多いそうです。
小田原漆器ができるまで
優れたろくろ技術を用いて
木目を活かした木地を制作
現在の小田原では、木地作りと漆塗りで完全分業制が敷かれ、量産体制も整っています。
しかし、中にはすべての工程を一貫して行う職人もおり、3ヵ月から6ヵ月の月日を掛けつくりあげます。まずは、優れたろくろ技術を用いて、木目を美しく生かして荒く挽き、木地を制作。乾燥させたのち、中挽き鉋(かんな)で仕上がり寸法直前まで削ります。次に仕上げ鉋で表面を滑らかにし、丹念に磨き上げます。塗りの工程は、大きく分けて二つの技法が用いられます。それが、木地に直接生漆(きうるし)を摺(す)り込み、余分な漆を綿布で丁寧に拭く作業を繰り返すし仕上げる「摺漆塗」と、木目がうっすらと透けて見えるよう透明な漆を塗り仕上げる「木地呂(きじろ)塗」。これらの工程の多くは、昔ながらの技術を受け継ぎ、熟練された職人さんにしかできない手作業によるものとなっています。
主な産地・拠点 | 神奈川県 |
このワザの職業 | 塗師 木地師(漆器) |
ここでワザを発揮 | 盆 皿 椀 茶托(ちゃたく) |
もっと知りたい | 社団法人 箱根物産連合会 |