奈良県 奈良筆

 奈良筆の歴史

弘法大師が広めた奈良筆。
日本の筆づくりの原点

奈良筆毛筆の起源は古く、2300年程もさかのぼった、秦時代の中国にはじまったとされています。日本においては、飛鳥時代の初期から中国文化と共に筆が輸入をされるようになりました。その後、平安時代に遣唐使として弘法大師(空海)が中国に渡った際に毛筆づくりの技法を極めて帰り、大和国(奈良)の坂井清川という人物に伝承をしたことが奈良筆、および日本においての筆づくりの最初であると云われています。その後、京都筆、豊橋筆、越後筆、江戸筆そして熊野筆などの各地に筆づくりが広がっていきました。明治時代以降は学校教育にも使用されるようになり、わたしたちの身近な存在となっています。現在でもその歴史や伝統によって磨かれてきた匠なワザと心は継承されています。その品質は、書道家や専門家にも高い評価をうけています。

 奈良筆の魅力

実用性も芸術性にも優れる。
奈良の歴史と魂がやどる職人ワザ

奈良筆古くから人々の暮らしの中心にあり、文化や芸術の発展に貢献をしてきた奈良筆。東大寺の大仏に目を書き入れる儀式(大仏開眼供養会)にも用いられていたことからも、その様子が伺えます。現代でも小・中学校では新年の行事として書き初めがあることも、ほかの文具とは違った存在。また、平安時代に政治家、文人として名を馳せた菅原道真が学問の神としてまつられる菅原天満宮(奈良県奈良市)では、毎年3月に筆まつり(来訪者が古い筆を感謝とともに納め、神社からは新しい筆を贈られる)が行われています。その奈良とともに発展してきた伝統から生み出されてきた高い品質は、文字や画筆としてだけではなく、装飾管と呼ばれる、筆管に様々な素材をつかい細工を施した美術品として、鑑賞や愛玩としても扱われています。

 奈良筆ができるまで

毛の選定から全神経をそそぐ。
腕と経験が良質な筆をうみだす

奈良筆ができるまでヒツジ、ウマ、シカ、タヌキ、イタチ、テン、ウサギ、リス等、筆に使用されている獣毛は数十種類におよびます。さらには筆の細太、柔剛、長短などの用途別に分類し、その目的に最適な部位・箇所の毛を選びます。弾力、強弱、長短などを巧妙に組み合わせていく製筆技術は、継承されてきた筆匠達の経験と研究努力から生まれるものです。くしを入れてよく混ぜ合わせたら、もみがらを焼いた灰をかけ毛先を整えていきます。そして、はんさし(刃のない小刀)で悪い毛を取り除いたら、水に浸し寸法を合わせながら形を整えていきます。こちらも熟練された繊細な技術が必要となる作業です。その後、むらのないように入念に練り混ぜを繰り返し、のりを加えた後で太さを決めて芯をつくります。きれいな毛を周りに巻きつけ乾燥させたら、苧締め(おじめ/根元を麻糸で縛り、尻を焼きゴテで焼き、強く締める)をして穂首が出来上がります。あとはその穂を接着剤で取り付けて、布海苔(ふのり)を充分しみこませ、形を整え乾燥させます。それにサヤをかけ、軸に彫刻などを施し、仕上げをしていきます。こうして、ようやく一本の奈良筆が仕上がるのです。

主な産地・拠点 奈良県
このワザの職業 筆づくり職人
ここでワザを発揮 書道用筆、画筆、毛筆、化粧筆、面相筆
もっと知りたい 奈良筆|日本伝統文化振興機構