土、砂、漆、木、鉄。
南部鉄器を生み出す素材と道具。
5つの自然の恵みを使い
鉄の器を作り出していく。
「砂鉄」「漆」「川砂」「炭」「粘土」。南部鉄器は、この5つの自然の恵みから作られます。自然物を使って人の手で生み出される鉄の器には、とてもロマンを感じます。他の伝統工芸品でも職人のほとんどが、ものづくりに必要な道具の多くを自分で作りますが、南部鉄器でもそれは同じようです。
南部鉄器の製造工程を追いながら、その道具についてご説明いたしましょう。
木型を回転させて鋳型を作る。
平面の図案を立体化していく。
どのようなデザインの鐵瓶を作るか。イメージを図案にした後に、木型をつくります。これを実型(さねがた)にはめて、木型を回転させながら鋳型を作っていきます。鋳型は溶かした熱い鉄を受け止める器ですが、土と粘土で出来ています。土と粘土を水で湿らせ、実型と木型の隙間に詰めていき、木型をくるくる回すことで、その隙間が一定に形作られ鋳型になっていきます。
鉄瓶の表面に模様を描く。
ふるいで砂をより分ける。
鋳型をつくる工程を「型挽き」と言います。この時、粗い砂からはじめ、片栗粉のように細かな砂まで砂の粒子を替えて挽いていきます。この工程を「荒挽き」「中挽き」「仕上げ挽き」と呼びます。こうして出来上がった鋳型の表面に型をおしていくことで、鐵瓶の表面に模様が生まれます。霰押(あられおし)で押せば、凹んだところに鉄が入り、お馴染みの霰紋(あられもん)が、鐵瓶の表面に浮かび上がります。
鋳型に中子を組み合わせる。
溶かした鉄をこの隙間に流し込む。
鋳型には「中子(なかご)」という型を組み合わせます。中子があることで、鐵瓶の空洞が生まれます。この中子を鋳型に組み合わせ、溶かした鉄を注ぎ込みます。
仕上げの段階で漆が登場。
漆を塗る刷毛も手作りの道具。
鐵瓶を取り出した後は、鋳込みの時にできたバリを取り、さび止めのために鐵瓶が真っ赤になるまで炭火で「釜焼き」をします。この段階では、鐵瓶の色はまだ鉄のそのままの色で白っぽく感じます。ここに着色をすることで、黒や茶色の鐵瓶に仕上がります。