一位一刀彫の歴史
根付彫師の名人が惚れた
飛騨の一位(いちい)
江戸時代末期、根付彫師(ねつけほりし)・松田亮長(すけなが)が飛騨の銘木である一位材(常緑針葉樹)を根付彫刻(印籠・巾着などを帯にはさむための留め具)に活用したのが起源だといわれています。彩色をしない木肌の美しさをそのまま表現した一位一刀彫は、鋭く細かな彫刻を可能にしました。一位一刀彫という名の由来は、一位を一刀一刀魂を込めて彫ることから呼ばれるようになったそうです。その後、茶道具、置物、面といったものにまでおよび、刃の跡を鋭く残す手法で飛騨を代表する彫刻になりました。飛騨の自然と共に、発展してきた彫刻です。
一位一刀彫の魅力
仕上げは巧みなノミさばき。
色つけしない木目の大迫力
仕上げに全く彩色しない一位一刀彫は、写真的な細やかさや迫力のある表情が特徴です。一位の木目だけでなく、白太(しろた/樹皮に近い外側の部分)、赤太(あかた/樹心に近い色の濃い部分)の木肌を活かした色合いも魅力のひとつ。年月を経るほどに、茶褐色になり、艶が増します。だから、同じ材でも時代によって表情が異なるのです。100本の彫刻刀を使い分けて作られる一位一刀彫は、木の風合いを重視するため、彫刻の刃の跡をわざと残して彩色をしません。木のぬくもりや美しさを、そのまま届けてくれます。飛騨の高山祭で使用される屋台にも、そのワザが息づいています。屋台に施された優美で大胆な彫刻が、祭りを盛り上げているのです。
一位一刀彫ができるまで
100本のノミを駆使。
時に大胆に、時に繊細に彫る
色つけがないため、工程は彫りが中心になります。まず、自然乾燥させたイチイを木目や赤太、白太などの木の状態を見極め、ノコギリやナタで下ごしらえ。完成をイメージして、大まかな輪郭を作ります。次に大胆に彫り、イメージを少しずつ形にします。形ができたら、100本というさまざまな大小のノミ(職人によって異なる)を使い分け、細かな部分を彫り出し。すみずみまで仕上げた後、蝋で丁寧に磨き上げます。時を過ごすほどに、色つやが増す彫刻の完成です。
主な産地・拠点 | 岐阜県 |
このワザの職業 | 仏像彫刻家 彫刻師 |
ここでワザを発揮 | 茶道具、置物、面 |
もっと知りたい | 飛騨地域地場産業振興センター 飛騨古川まつり会館 |