ワザNOW vol.8
技能五輪全国大会2012 2012/12/28

ものづくりの精鋭たちが長野に集結!
2012技能五輪

技を競い合う若者たち

 みなさんは、「技能五輪」をご存知ですか?
技能五輪とは毎年行われる青年技能者の技能レベルの日本一を競う技能競技大会で、出場するのは、各都道府県職業能力開発協会等を通じて選抜された、原則23歳以下の青年たちです。



今年の技能五輪は、アビリンピック(障害のある方がたの技能競技大会)とともに10月26日(金)~29日(月)に長野県で開催され、行われた種目は、機械系「機械組立て、抜き型、精密機器組立て、機械製図、旋盤、フライス盤、木型、自動車工」、金属系「構造物鉄工、電気溶接、自動車板金、曲げ板金、車体塗装」、電子技術系「メカトロニクス、電子機器組立て、電工、工場電気設備」、建設・建築系「配管、石工、左官、家具、建具、建築大工、造園、冷凍空調技術、とび」、サービス・ファッション系「貴金属装身具、フラワー装飾、美容、理容、洋裁、洋菓子製造、西洋料理、和裁、日本料理、レストランサービス」、情報通信系「ITネットワークシステム管理、情報ネットワーク施工、ウェブデザイン」と24年ぶりに復活した「時計修理」の計40職種です。
その中で、今回、長野県松本市のやまびこドームで行われた「左官、家具、建具、建築大工」と「理容、美容」の6職種、10月27日(土)の競技の様子をレポートします。

今時の若者たちが見せる情熱

 10月27日(土)お昼すぎ、松本駅から会場のやまびこドームまで無料のシャトルバスで向いました。会場の周りには、テントが並び、名産品や手作りのクッキーなどが売られていて、まるでお祭りのような雰囲気。


 会場周辺には、出店が立ち並び賑わっていました。

 しかし、一歩会場内に入ると、真剣勝負の真っ只中。参加している選手だけでなく、周囲でサポートされている方々からも緊張感が伝わってきます。
どの選手も各会社や学校の代表であり、県の代表でもあります。今時の若者たちもこんなに目に力がある表情をするんだなぁと驚きました。

木造建築物を構築する技能を競う
「建築大工」

 ここからは、当日の競技内容をご説明しましょう。
まずは、「建築大工」
課題は「屋根筋交いのある小屋組の制作」
競技の手順は、
・部材の確認…寸法や割れ、大きな凹みなどを確認
・原寸図の作成…平面図・各部材の展開図を作成
・部材の木削り…各部材が所定の形状や断面寸法になるように削ります
・墨つけ…加工に必要な墨を部材に印します
・加工・刻み…部材相互の接合部を印した墨に従って加工
・組立て…加工が終了した個々の部材を組み合わせて完成

各ブースには競技内容についてわかりやすく解説がおかれてありました。
広い空間に、ズラリと並んだ選手たちが脇目も振らずに作業する姿は壮観。

課題の見本と部材

加工手順を早く正確に行う工夫が重要
「建具」

 次に「建具」
様々な工作機械、手道具、電動工具を使いこなし、効率よく作業を進め、各々の部材を正確に加工しなくては、きちんと組みあがりません。
参加選手たちのきびきびとした動きが印象的でした。

今回の課題の見本です


競技の手順は、
・原寸図の作成…与えられた図面から原寸の製作図を描き起こす。
・材に寸法を写す…与えられた材を寸法に合わせて削り、原寸図に従って材に寸法を写す。
・穴掘り、ほぞ付け作業。
・面取り・パテ欠き…表面に面をとり、裏にパテ欠き(ガラスを入れるための溝を掘る)。
・水ぶき・鉋…作業中にできた打ち傷を取るために水ぶきし、鉋をかける。
・組み立て…組み立ててサンドペーパーで仕上げる
・寸法の確認

課題として与えられた図面
女性も大きな機械を使いこなします。
のみを使って、部材を組み合わせるための「ほぞ」や「ほぞ穴」を加工していきます。

電動工具を使い、Rを出しています。

引き出し作りが重要
家具

 課題はキャビネット。脚部、箱部、扉部、引き出し部があり、特に高い技術が要求されるのは、引き出し作りとのこと。 蟻加工(参考図参照)した板がきっちり組合わないと、引き出しがちゃんと収まらなくなってしまいます。
また、建具の競技同様、工作機械、手工具、電動工具といった様々な工具を手順よく、効率よく使いこなさなくてはなりません。工作機械の一部は会場に置いてあるものを共同で使っていくため、段取りの良さも大事な評価基準です。

蟻加工参考図。今回の取材をきっかけにあちこちの引き出しを確認してみましたが、現在ではこのようにきちんとした作りの引き出しが少ないことを知りました。次の世代に引き継がれて欲しい技術なんですけどね。
「ほぞ」や「ほぞ穴」など正確に部材を加工することが大切

かんな、のみ、のこぎりだけではなく電動工具など、さまざまな工具も使いこなしていきます

建物に装飾性や耐久性を施す
左官(その1)

 左官の課題は、課題図に従って作業板を立体的な装飾を施した壁にすること。
さらに、全体の作業工程を3分割し、それぞれを決められた制限時間内に行う必要があります。

 作業内容
1)引き型の製作…鉄板に課題に従って罫書し、金切り鋏みなどで切断し、引き型を作る。
2)置き引き…石膏の粉を水で溶いたものを作業台に流し、適当な硬さになったものに引き型を通す作業を何度も繰り返す。
3)レリーフの作成…置き引きによって作成したモールディングを電動工具で切断し、それぞれを石膏で接着
4)墨出し…壁面のレリーフを接着する箇所を測定し印をつける
5)取り付け…墨出しした場所に石膏でレリーフを接着する
6)塗り壁…金コテと木コテを使いながら壁を塗る。内側には描く絵は自由となるためそのセンスも問われる。

まずは、レリーフ作りについてご紹介します。

石膏を粉から水で溶きます

適当な硬さに溶いた石膏を作業台に流していきます
作業台の石膏の上にスチレンの芯を載せ、さらに石膏をかけ、適当な硬さになったところに引き型を通していきます。レリーフ作りに必要な引き型は、鉄板を金切り鋏みなどで切断して作り、木枠に取り付けられています。
何度も繰り返し引き型を通していくと表面が滑らかになっていきます

引き型を通す作業を繰り返し、このようなレリーフを作り上げていきます

建物に装飾性や耐久性を施す
左官(その2)

 次に、作り上げたレリーフを壁に接着していきます。

壁に墨つけで付けた印にあわせて、レリーフを取り付けていきます。
さらにレリーフの表面を修正します。
競技中に競技委員がその精度を細かくチェックしていきます。

完成見本

同じ会場で、理容と美容の競技も行われていました。

今回の技能五輪の金賞受賞者は、来年7月にドイツのライプツィヒで開催される第42回技能五輪国際大会に出場します。
先日(11月29日)に派遣される日本代表選手が正式に発表されました。
(詳しくは、厚生労働省のホームページをご覧下さい。http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002pmdp.html)

技を競い合う若者たちの姿は、大変感動的ですが、今回の大会も開催地である長野以外ではほとんどフォーカスされていないことが気がかりです。少しでも多くの人の関心が集まるよう、これからも若者たちの活躍をご紹介していきたいと思っています。