加茂桐箪笥の歴史
大工が杉で箪笥を作ったのが基。
現在のデザインは昭和初期に確立
1783年、丸屋小右エ門という人物が、加茂で大工をするかたわら杉材で箪笥を制作したものが「加茂桐箪笥」の始まりと伝えられています。ちなみに、加茂市内の旧家には、箪笥の裏板に文化11年(1814)購入と記された桐箪笥が現存するそうです。その後の明治15年(1882)頃、桐箱や桐箪笥類を船積みし、加茂川から信濃川へ出て北海道から東北六県へと出荷するなど、市場は活気づきました。昭和の初めには、砥(と)の粉と工芸品の染料としても用いられるやしゃの実との混合液を刷毛(はけ)で塗る「やしゃ塗装」が開発されて、現在の桐箪笥のデザインが完成。現在では、全国の桐箪笥の70%を生産し、北海道から九州まで広く全国に出荷するようになり、地場産業として加茂に根づきました。こうした発展の影には、もともと加茂市周辺で天然桐が豊富にとれたこともあります。
加茂桐箪笥の魅力
上品な木目と温かみある木肌。
湿気や乾燥、火気から衣類を守る
桐箪笥は、難燃性・耐熱性・防虫性に優れているため、大切な衣類を長いあいだ守ってくれます。また、もともと桐材は、湿気や乾燥による伸び縮みが少ないことに加えて、やわらかい材質。そのため、引き出しの隙間が少なく、湿気や熱をシャットアウト。さらには、開け閉めが楽なので衣類の取り出しもスムースです。一方で、歳月とともに深みを増していく桐の美しく上品な木目と、木肌の温かみを生かした豊かな風合いも大きな特徴。伝統的なデザインも脈々と受け継がれていますが、その傍らでは現代的な感性でデザインを施した品も生まれており、そうした品はモダンな住まいであっても違和感なく、素敵なインテリアとして空間に溶け込みます。
加茂桐箪笥刻ができるまで
木釘で組み立て。塗りは木肌美を
生かすため薄化粧程度に
製材した部材を、木目と色でより分け、1枚の板に組み合わせていきます。つぎに、木釘を打ち込む伝統技法で本体を堅牢に組み立てていき、箪笥本体と同じ技術で組み立てておいた引き出しや扉部分をカンナで調節しながら、隙間なく本体に入れ込んできます。そののち、木地を調整しながら表面を磨き、木目を引き立てていきます。さらに、砥(と)の粉とやしゃの実の混合液を、桐本来の木肌美を生かしながら、刷毛(はけ)で塗っていきます。この混合液つくりには、熟練した確かな技術・勘を要し、刷毛使いなども3年以上の経験が必要といわれています。自然乾燥させた後は、木目に沿って蝋(ろう)を均一に掛け、仕上げをします。そして、箪笥の表情を決める最終工程「金具付け」を行い完成です。
主な産地・拠点 | 新潟県 |
このワザの職業 | 指物師 箪笥職人 |
ここでワザを発揮 | 箪笥 |
もっと知りたい | 加茂箪笥協同組合 |