江戸木彫刻の歴史
仏教とともに日本に伝来。
庶民文化の花開く江戸期に発展
木彫刻は仏教の伝来とともに、6世紀頃に伝わってきたと言われています。
平安〜鎌倉時代には仏教の隆盛と共に多くの仏像が造られました。ところが室町時代になると、偶像崇拝的な考えを否定する禅宗等が台頭し、仏像彫刻の需要は減っていきます。その代わりに職人たちが手掛けたのが建築彫刻です。寺社の柱や欄間等から始まり、木彫は建築装飾という文化にまで発展します。
江戸時代には、全国から木彫職人が江戸に集まり、装身具や家具など身の回りの様々なものにも木彫の技術が生かされるようになりました。
日光東照宮は、部品を江戸の職人が制作し、日光へ運んで組み立てられたと言われています。
明治以降は西洋建築にも木彫の技は発揮され、現在でも人物や動物等の木彫刻以外にも、日本家屋の欄間、寺社や神輿、葬祭具などにその技を見ることができます。
江戸木彫刻の魅力
日本全国の技を集約。
多面的な技の冴えがその魅力
日本全国から腕自慢の職人が集まり、技を競って発展してきた江戸木彫刻は、その巧緻さと洗練されたデザインが魅力。作品を造り上げるには木材を刻む技だけではなく、絵画的素養や立体的な物の見方、書道などの多角的な技も必要になります。葛飾北斎にも影響を与えたと言われる江戸時代の職人・武志伊八郎信由は、波を彫らせたら日本一と賞され「波の伊八」という異名がありますが、その躍動感あふれる木彫は今見ても、その素晴らしさにうならされます。
また、寺社建築に施された見事な大物彫刻から、日本家屋や料理店に見られる欄間、能面、置物、掌に収まる根付けやアクセサリーなど、様々な大きさ・用途の作品を見られるのも楽しいところ。豪邸住まいではなくても、ストラップや根付けでその技の一端を所有することができます。
江戸木彫刻ができるまで
材を選び木目を読む。
立体的な姿を把握し形を削り出す
どんなものを作るのか構想を練り、目的に合った木材を選びます。使用される木材は主に、ケヤキ、ヒノキ、クスノキ、サクラ、キリ、ビャクダンなど。和紙に下絵を描きます。立体の場合は4面分の下絵が必要になります。
木目の方向等に気を配りながら、必要な分量を木材から切り出します(木取り)。
まずは鑿や彫刻刀で荒彫りし、次第に中彫り、仕上げ彫りと細かく仕上げていきます。大きな彫刻や立体の場合は削ったままで完成となりますが、厚さの薄いものや小さな物などは、最後にトクサで磨きます。
主な産地・拠点 | 東京都 |
このワザの職業 | 仏像彫刻家 |
ここでワザを発揮 | 仏像、御輿、能面 |
もっと知りたい | 東京都産業労働局 東京の伝統工芸品 葛飾区伝統産業職人会 |