岩手県 南部鉄器

 南部鉄器の歴史

京都から茶釜職人を招いた
のが、南部鉄器のはじまり

南部鉄器南部鉄器の始まりは、17世紀初め。茶道に造詣の深かった28代南部藩主が、京都から茶釜職人「初代小泉仁左衛門」を城下町盛岡に招き、茶の湯釜を作らせたのがきっかけです。現在有名な南部鉄瓶は18世紀になって茶釜を小ぶりにして改良したのが始まりで、手軽さから広く用いられるようになりました。また、原料となる砂鉄や木炭用の木材が盛岡の地で豊富に産出されたことも、この地で南部鉄器が栄えた大きな一因です。ちなみに、岩手県内では盛岡の他に奥州市水沢区でも鋳物(いもの)の生産が盛んで、盛岡と水沢で作られた鋳物を総称して南部鉄器と呼びます。

 南部鉄器の魅力

「わび・さび」の心を映す文様、
鉄器に宿る温もりと意匠

南部鉄器美しく並んだ粒が描き出す「霰(あられ)」の文様からあふれる温かみ、そして「わび・さび」を重んじる心が生みだす独特の品格を持つ南部鉄器。最初は茶釜のみが作られていましたが、現在では創意工夫を重ね、アクセサリー、ブックエンドなどを制作しているほか、その時代の最先端を行くヨーロッパのデザイナーとコラボレーションするなど、国境を越えたデザイン展開もしています。また、使い込むほどお湯の味、そして色合いも良くなるのも大きな特徴の一つ。近年では、鉄器から溶け出す鉄の健康効果が知られるなど、見た目の美しさだけでなく、実用面からも高い評価を受けています。

 南部鉄器ができるまで

80以上の工程で耐久性の
高い作品を生みだす

南部鉄器ができるまで南部鉄器は鉄を素材にした鋳物。今日でも焼型、乾燥型の方法で、文様押し、肌打ち、漆仕上げなど、80以上の作業工程を経て作られるため、完成までに2カ月近く掛かることもあります。中でも鉄器の錆(さび)を防ぐため、約900℃の炭火の中に30分ほど鉄瓶を入れておく「金気止(かなけど)め」は、南部鉄器独特の技術です。また、鉄瓶の制作は本体を作る職人と、持ち手の部分に当たるつるづくりを専門とする職人がいるため、双方の呼吸が合うか合わないかで作品の善し悪しが決まると言っても過言ではありません。

主な産地・拠点 岩手県
このワザの職業 鋳物職人 つる鍛冶屋
ここでワザを発揮 茶釜 鉄瓶(てつびん) 花器
もっと知りたい 南部鉄器協同組合