ワザ紀行 vol.5
墨田区 2012/5/22

スカイツリーだけじゃもったいない
ものづくりのメッカ、「すみだ」を巡る

小さな博物館、工房ショップ…
街を歩けばワザに出会える

 いま話題の東京スカイツリー。テレビや雑誌で様々な特集が組まれていますが、どこにあるかご存じですか? そう、東京都墨田区。実はこの墨田区、江戸時代にルーツを持つ伝統工芸や、最先端の技術をもつ町工場が多数存在する、ニッポンのモノづくりのメッカとも言える場所なのです。あなたの暮らしの身の回りにも、きっと「MADE in SUMIDA」がたくさんあるはず。そこで今回は、スカイツリーで注目が集まる墨田区のもう一つの顔、「ニッポンのモノづくりを支える街・すみだ」を巡ります。

 墨田区は1985年から「3M(スリーエム)運動」を展開しています。3Mとは、墨田区の様々なモノづくりの歴史や道具、貴重なコレクションに出会える「小さな博物館(Museum)」、職人さんの工房と店舗が一体となり、ここでしか買えないオリジナル商品もあったりする「すみだ工房ショップ(Manufacturing Shop)」、そして優れたワザを有し墨田区から認定を受けている職人「すみだマイスター(Meister)」の3つの運動の頭文字をとったもの。「すみだのワザ」をもっと広く、もっと身近に感じてもらうための取り組みです。

墨田区

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2012年5月現在、「小さな博物館」は25カ所、「すみだ工房ショップ」は23カ所、「すみだマイスター」は33人が認定されています。これは今後も増えていく予定。区内循環バス「すみだ百景すみまるくん・すみりんちゃん」(ルート等はこちらから)を利用すると便利です。場所によって休館日や営業時間が異なったり、予約が必要だったりするのでご注意を。

墨田区の街全体を
ミュージアムに

 「小さな博物館」のひとつ、「『名刺と紙の博物館〜SAKURA TERRACE(サクラテラス)〜』を運営する(株)山櫻のコーポレートコミュニケーション部門長広報担当であり、墨田区産業振興会議 委員でもある内田芳嗣さんに、お話をお伺いしました。


「1960年代に、フランスで“エコミュージアム”という運動が始まりました。これは地域全体で、自然、歴史、文化、生活などの遺産を保存・展示し、地方文化を再認識することで、地域の復興につなげる、というものです。少し切り口は異なりますが、墨田区の街全体を“ミュージアム”にしたい。そしてミュージアムを観てまわるように、墨田区内を街あるき、街めぐりしてもらいたい。『3M運動』には、そんな想いが込められています。これまで墨田区でせっかく培ってきたモノ作りの歴史や職人の文化をあらためて皆さんに知ってもらうことによって、墨田区を元気にすることを目指しています。その際に大切なのは、区外から来てくれる方々ももちろんとても貴重でありがたいのですが、こういった運動を通じて地元の住民の方々が積極的に参加してくれること。それによって、シビックプライド(ここでは区民であるが、一般的には市民が自分の街に誇りを持つことを指す)の機運が高まり、区外の方にはもっともっと墨田のことを知ってもらって更にファンやサポーターになってもらえる人が増えるきっかけとなればと思っています」

『名刺と紙製品の博物館~SAKURA TERRACE(サクラテラス)~』は2008年に(株)山櫻墨田オフィス(旧墨田支店)を改装する際、ワンフロアを「小さな博物館」としてオープン。名刺や封筒に関し、他にはない様々な展示を見ることができます。

「山櫻は1931年の創業以来、名刺・封筒を中心とした紙製品の専門メーカーとして技術革新をしてきました。名刺の歴史は山櫻の歴史、と言ってもいいほど。ですからここでは日本ならではの名刺文化の歴史を見ることができます。また、現在メールをはじめとしたデジタルネットワークがコミュニケーションの主流となっていますが、名刺や手紙(封書)という「モノ」をもらったときの感動は、より新鮮でインパクトのあるものとなってきているでしょう。人と人をつなげるツールとして、紙は『質感』『手しごと』『美意識』などを切り口で考えた時に、まだまだ重要なツールです。さらに古くからある印刷方法で今は数少なくなってきましたが、それを知らない方々にとっては新しい活版印刷をほどこしたものなどの提案もしており、味わいのあるということで好評です。そうした工夫の数々もご覧いただけますので、ぜひ足を運んでください」

サクラテラスでは、区内を中心とした職人さんなどを招いてのトークショーも開催しています。

「なるべく職人さんに外に出てきてもらって、自分自身の口で語ってもらいたい、発信してもらいたい。モノづくりのストーリーや職人さんの「人となり」を知ってもらうことで商品の魅力も深まりますし、職人さん自身が自分のことを考えるきっかけにしてもらえればとも思っています。そして積極的にコミュニティーに参加する職人さんが増えて、新しいネットワークが広がれば、さらに墨田区の活力がアップするでしょう。その一助になればうれしいですね」と語る内田さんです。

次のページからは、『小さな博物館』『すみだ工房ショップ』の中から、編集部がいくつかピックアップし、ご紹介します。おもしろそうだな、と思ったら、ぜひお出かけを!!

思わず長居してしまう
名刺と紙製品の博物館・サクラテラス

 それではまず、『名刺と紙製品の博物館~SAKURA TERRACE(サクラテラス)~』をご紹介しましょう。 サクラテラスには常設展、「meishi−lab」「futo−lab」「ワークショップ」のコーナーがあります。さらに企画展が行われている場合もあります

常設展コーナーでは、名刺や封筒の歴史がわかる展示が。山櫻で名刺製作に使われていた、クラシックな印刷機や裁断機は一見の価値ありです。


 (株)山櫻マーケティング部門プロモーショングループのマネージャー・大場敦子さんに、名刺ができるまでを解説した展示の前でご説明いただきました。

「山櫻の名刺の大きな特徴のひとつに、『ロータリーカッター』という機械で紙を裁断していることがあります。これにより大きい紙も1枚1枚しっかり平行に裁断できますし、紙の流れ目を一定にすることができます。見て、触って美しい、最適な名刺用紙ができあがります。印刷関係の方からも刷りやすいと言われているんですよ。サクラテラス限定販売のyoridori meishiも、このロータリーカッターを使用しています。そこは名刺メーカーとしてのこだわりですね」

「meishi−lab」は山櫻の新しいブランド。


 「meishi−lab」は山櫻の新しいブランド。美しい質感の個性的な名刺が並びます。紙の側面に色がほどこされた「rinsai(りんさい・凜彩)」は、名刺用に特別に漉かれた紙で、オフセット印刷にはもちろん、活版印刷との相性もよいそうで、しっかりとした厚みで存在感があります。

こちらは「yoridori meishi(よりどり名刺)」。

こちらは「yoridori meishi(よりどり名刺)」。名刺サイズの紙を、好きな種類を好きな数だけ組み合わせて購入できます。凹凸があるものや、素材感のあるもの、一枚ずつ手で漉かれた和紙など。豊かな色彩もとても魅力。のちほどご紹介しますが、ここで紙を購入して、ワークショップのコーナーで、自分でオリジナルの名刺をつくることも可能です。

封筒を使った手づくり文房具や
ワークショップで自分だけの名刺も

 「futo−lab」は興味深い製品がいっぱい。手づくりを楽しめて、遊び心たっぷりの封筒にワクワクします。

「たとえば、ミシン目や折り筋の入った紙を折っていくだけで封筒ができる『Futo Pad(フウトウ パッド)』という製品があります。これは文字を書いても透けにくい紙を採用することで、 1枚で便箋と封筒、両方の役割を果たす封筒の冊子です」


 これらの封筒を企画しているのは、サクラテラスを拠点に活動する女性だけで結成された「封筒研究所」の所員たち。実は大場さんは「封筒研究所」の所長です。

「封筒研究所」の所長、大場さん。

大場さんが手にしているのは、事務用の封筒でつくったポケットフォルダー(手づくりキット)。ダイレクトメールなどによく使用され、口が大きく開く“カマス貼り”の封筒が使用されているので、領収書など細かいものの整理ができ、中身もよく見えて出し入れも簡単にできます。

この他、とても小さな封筒とカードの『petit envelope(プチ封筒)』『petit card(プチカード)』というカワイイ製品が注目。

「これは名刺を入れる封筒の実際の9分の1のサイズのものです。ありがとう、やハッピーバースデーなどのメッセージも書けて、お手紙やプレゼントを贈るのが好きな方に特に好評です。すべて手作りなので、現在はここでのみの販売となっています」

サクラテラスの一画には、ワークショップのためのスペースも。

ピンキングばさみやクラフトパンチ、色とりどりのマスキングテープやスタンプが用意され、1時間800円で利用することができます。

「紙や手づくりキットをご購入いただいた、すぐに作ってみたい、自分でアレンジしてみたい、という方のためのスペースです。道具を自由に使っていただいて、自分だけの名刺やメッセージカードなどを作ってみてください。私たちスタッフが、一緒にアイデアを考えたり、作り方のアドバイスもさせていただきます」

訪れた人は、ついつい長居してしまう、という『名刺と紙製品の博物館~SAKURA TERRACE(サクラテラス)~』。会社の名刺だけじゃなくて、もうひとつの自分の名刺、作ってみませんか。

名刺と紙製品の博物館~SAKURA TERRACE(サクラテラス)~
東京都墨田区立川3-1-7
03-5625-0630(代表)
開館時間/10:00am~5:00pm (祝祭日・夏期休暇・年末年始除く)
ホームページアドレス http://www.yamazakura.co.jp/sakuraterrace/

スカイツリーのお膝元で
粋に触れる『屏風博物館』

 次にご紹介するのは、東京スカイツリーのすぐ近く、向島一丁目にある小さな博物館、『屏風博物館』です。

屏風博物館


 ここではその名の通り、様々な屏風を見ることができます。運営している片岡屏風店さんは、東京で唯一の屏風専門店。伝統的な絵柄のもの、斬新な現代的なデザインのもの、6曲や4曲、2曲のもの、7尺(約210センチメートル)という大きなもの、棚に飾れるような小さなもの、等々。本当に様々な屏風を見ることができます。

様々な形やデザインの屏風が

また、下貼りや骨組みなど屏風の構造も展示。屏風づくりに使う道具も見ることができます。

小さなサイズの様々な屏風。購入できるので、ぜひお部屋のインテリアに

そして、さまざまなオリジナル屏風を見ることができるのも、屏風博物館の見所。
たとえば愛用した着物と帯を屏風にしたものや、開き方で異なった絵が現れるからくり屏風など、珍しいものがあり一見の価値ありです。
屏風博物館では、10名以上のグループから、からくり屏風などの制作体験もできるので(要予約)、興味のある方は仲間を募って挑戦してみてはいかがでしょう。

展示コーナーには、刷毛や小さな鉋など、ワザを支える道具の数々が

新しい屏風づくりに挑戦する
すみだマイスター

 屏風博物館を運営する(株)片岡屏風店の代表取締役にして『すみだマイスター』に認定されている、片岡恭一さんにお話をうかがいました。

すみだマイスター・片岡恭一さん


「屏風博物館は、平成8年に工房の改築を機にオープンしました。現代ではなかなか日常的に屏風を見る機会はあまりありません。でも見てもらえれば、その美しさや魅力を理解して頂ける、そう考えていた折りに、墨田区の小さな博物館運動のお話があり、これはひとつのチャンスだと考えて、このスペースを開設しました」

屏風といって、最初にイメージするのは、おそらく結婚式などで使われる金屏風ではないでしょうか。でも最近では結婚式も洋式が多く、需要が減ってきているとのこと。他にはお雛様や五月人形の背景に置く屏風。片岡屏風店さんでも数多く製作されています。加えて注目は、いわゆる別注で製作するオリジナルの屏風。片岡さんの得意とするところです。

「たとえば受け継いできた愛用の着物や帯を使って、それを屏風に仕立て上げる、というお仕事もいただきます。また、変わったところでは、お父様が使われていたネクタイを屏風にしたい、というご要望にお応えしたこともありました。大切なものを思い出に残すひとつの方法として、屏風がお役に立てることは大変うれしいですね」

着物を使った屏風。右端は帯が使われています

他にも、着物の加工職人さんと協力して、松の木の図柄を本金箔で立体的に浮かび上がらせた美しいオリジナル屏風や、アーチストに依頼されてレンチキュラー(見る角度によって図柄が変化する3D印刷)の屏風を作成するなど、様々な新しいことに挑戦しています。

今回、特別に2階の工房を見せて頂きました。片岡屏風店は現在8名。

2階の工房では職人さんたちが黙々とごとに取り組んでいました

「見学にきた若い男性が翌日にまたやってきて、“働かせてください”と。それがきっかけで働き始め、現在に至っている若手職人もいます。また、自分で書を刻字した板を屏風にしたいといってきて、一緒に屏風をつくるうち、職人としてここで働くようになった女性もいます」
他にも片岡さんのお父様の代から働いている職人さんも、元気にがんばっているそう。「自分がおむつをしていた頃からの方もいます」と笑う片岡さんです。

こうした職人さんとともに、自らも新しいことに挑戦し続ける片岡さん。
「どんな仕事がきても、『できない』と思うのではなく、『やってやろう』という気持ちになります。職人魂に火がつくというか。また屏風というものは、発想やアイデアで様々なことが可能だと思っています」

手際よく次々と屏風を形にしていくベテランの職人さんたち


 東京スカイツリーに来たら、ぜひ屏風博物館にも足を運んで、片岡さんのワザが息づいた、新しい屏風の魅力にふれてみてください。

屏風博物館
東京都墨田区向島1-31-6
03-3622-4470
開館時間/10:00am~5:00pm (年末年始のみ休業)
ホームページアドレス http://byoubu.co.jp

職人のこだわりがいきづく
江戸木目込人形博物館

 『屏風博物館』からほど近く、向島二丁目にあるのが『江戸木目込人形博物館』。ここでは大正時代以降の、ひな人形や御所人形など様々な人形を見ることができます。

向島二丁目の、桜並木が美しい墨堤からもほど近い一画にある『江戸木目込人形博物館』
御所人形と呼ばれる人形の数々。ふくよかな子供の裸身で、白い肌が特徴。大名等が、京都の御所や公卿たちからの贈り物への返礼として使ったことから、この名があるとか
ひな人形や御所人形等、塚田詠春さんのみごとな作品が展示されています


 人形の頭部ができていくまでの工程や、道具、材料なども展示されており、江戸時代に生まれた人形作りのワザを感じることができます。

人形の頭部がどのような段階でできていくのかがわかります
人形づくりに欠かせないも様々な道具や素材も見ることができます

伝統の人形がもっと身近に
製作の見学や体験も可能

 博物館を運営する塚田工房の塚田詠春さんもすみだマイスターであり、また国が認定する伝統工芸士でもあります。

展示について丁寧に説明してくださった塚田さん。製作体験の際も、わかりやすく丁寧に教えてくださるそうです


 「新作の人形に関しても、伝統的な木目込の技術にかわりはありません。細部にまでこだわるという、連綿と受け継いできた姿勢が、やわらかい質感の人形を作り出すのです」
『江戸木目込人形博物館』では、実際に製作作業の様子も見ることができ、そのこだわりの一端に触れることもできます。

布を丁寧にボディに「木目込ん」でいく作業。「木目込人形」の名前の元です
伝統的な方法ですくられたボディと愛用の道具たち
塚田詠春さんと、息子の真弘さん。現在は同じ工房で仕事をしています

さらに興味があれば、製作体験も可能(要予約、有料)。自分で製作したかわいい人形は、大切な記念になるでしょう。詳しくは下記のお電話か、ホーページからお問い合わせください。

製作体験でもつくることができるかいらしい木目込人形の「小町」。自分でつくれば愛着もひとしおですね

塚田工房さんにつきましては、次回の「すみたモダン」特集記事で、すみだモダン認証商品「江戸木目込人形 小梅雛シリーズ」などを通じ、人形作りへのこだわりを、さらに詳しくお伝えします。お楽しみに。

江戸木目込人形博物館
東京都墨田区向島2-11-7
03-3622-4579
月曜日~土曜日(祝祭日を除く、12/1~翌3/15まで休館)
10:00am~5:00pm 要予約
ホームページアドレス  http://www.edokimekomi.com/

ここでしか味わえない野菜菓子を
向じま梅鉢屋

 小さな博物館めぐりで少々疲れたら、ぜひ訪れてみてほしいのが、『向じま梅鉢屋』さんです。ここは「すみだ3M運動」の中の「工房ショップ」のひとつ。つまりその場で職人さんが作ったオリジナル商品を、その場で購入して楽しめるショップなのです。

店の前には小さな庭園スペースもあって、ほっとする癒やしの空間になっています

 梅鉢屋さんは江戸時代からの技法で作られる、砂糖漬け『野菜菓子』を今に伝えるお店です。現在、この江戸のワザを受け継いでいるのは、ここだけとのこと。

野菜菓子の詰め合わせ。様々な組み合わせがあり、選ぶことができます


 ごぼう、大根、みかん、昆布といった、江戸時代から伝わるものに加え、にんじんやナス、レンコン、ゴーヤといった新しい野菜の砂糖漬けにも挑戦しています。

店内はゆったりとしたスペースで、じっくり商品を選ぶことができそう

お店では、野菜菓子の様々な詰め合わせのほか、様々なオリジナルの和菓子を買うことができます。季節によって品目は変わりますが、それがまた、四季の移り変わりを感じさせてくれます。お土産として買って帰れば、喜ばれること間違いなし。粋な贈答品にもなるでしょう。

『梅鉢屋茶寮』からは庭園も眺められ、ちょっと贅沢なひとときをおくれます

店舗にはゆっくりと落ち着つける一角『梅鉢屋茶寮』もあります。おいしいコーヒーや抹茶などが野菜菓子とともに楽しめます。野菜菓子とコーヒーの相性の良さは抜群。また、実は野菜菓子は洋酒にもよくあうとか。残念ながら、ここではメニューにアルコール類はありませんが、家で試してみてはいがでしょう。

ご主人の丸山壮伊知さんにお話を伺いました。丸山さんは、江戸時代から続く砂糖漬菓子の技法を唯一受け継ぐ職人さんです。
「この野菜菓子は、実はとても手間のかかるお菓子なんです。お天気や気温によっても微妙に左右されます。しかし、ずっと守り続けられてきた伝統の味を、守っていきたい、またみなさんに楽しんでもらいたいと思い、野菜菓子づくりに取り組んでいます」

すみだマイスターとして認定されている丸山さん。野菜ごとに産地を限定するなど、素材へのこだわりも美味しい味の秘密です

野菜菓子は、先の丸山さんの言葉にもあるとおり、とても敷く人の手のかかったお菓子です。次回の特集では、丸山さんの野菜菓子づくりにさらに詳しく迫ります。ぜひご覧ください。

向じま梅鉢屋
東京都墨田区八広2-37-8
03-3617-2373
開店時間/月~土 9:00am~6:00pm (日曜・祝日休)
ホームページアドレス http://umebachiya.com/

自分にピッタリのお箸に出会える
江戸木箸 大黒屋

 梅鉢屋さんでひとやすみしたら、今回最後にご紹介する、東武曳舟駅からほど近い『江戸木箸 大黒屋』さんへ。ここも工房ショップで、その名の通り、木箸の専門店です。

静かな住宅街の中にある『江戸木箸 大黒屋』。江戸の風情が演出されたお店はちょっとのぞいてみたくなります


 一歩中にはいると、そこは数え切れないくらいのお箸が並べられています。ひとつひとつが職人の手作りで、素材や寸法、デザインも様々。いくつか持たせて頂いたのですが、どれも握り心地が違います。

ショップ内はゆっくりと時間をかけてお箸が選べる雰囲気。

どれが自分に合うお箸なんだろう、と思って試していると、あっという間に時間が経ってしまいます。素材の質感や色合い、様々なアイデアが活かされたフォルムは、本当に飽きることなく、その機能美に見入ってしまいます。日本人が培ってきたお箸の文化の奥深さを感じられるでしょう。

『江戸木箸 大黒屋』で商品開発を担当している丸川徳人さんに、話をお伺いしました。
「東京のお箸は大正初期から職人の手によって作られ始めたもので、だいたい四角形が主でした。そのなかにあって、現在の大黒屋主人の竹田勝彦が、より使いやすい機能的なものを目指して、細部にまでこだわった木箸づくりに取り組みました。その結果、今は五角、七角、八角など、機能性やデザインを追求した様々な木箸が生み出されています。『江戸木箸』という呼び名は、竹田勝彦が他の地域のものと区別するために命名し商標登録したもの。『江戸木箸』は、常識にとらわれず、常に新しいものづくりに挑戦しています」

上記の竹田勝彦さんもすみだマイスター。伝統の技術や素材にこだわりつつも、丸川さんをはじめとした若手の職人の感性を大いに活かして商品づくりをしています。

大黒屋さんには、そうしたアイデアが形になった商品もいっぱい。マグネットでふたつにわかれ、携帯に便利なお箸や、麺が滑らずつまみやすい“うどん箸”、また、東京スカイツリーの634メートルにちなんで、一膳の箸を六角、三角、四角削りにした、握りやすい立体形状のお箸“武蔵箸”も買うことができます。

うどん箸や豆腐箸、納豆箸など、機能性重視のお箸もいっぱい
「武蔵箸」など新作のお箸にも注目です

とても身近で、大切な“食”にかかわる道具でありながら、お箸にはあまりこだわっていなくはありませんでしたか? ここに来ると、目から鱗がおちるように、お箸への認識がかわってしまいます。ぜひ、自分にピッタリのお箸に、ここで出会ってください。
次回の特集では、さらに丸川さん木箸づくりについてお伺いします。また、工房にもお邪魔し、木箸づくりの醍醐味に迫ります。

木箸職人として商品開発に取り組む丸川さん。ショップではお客様ひとりひとりに時間をかけて木箸の魅力を伝えています


江戸木箸 大黒屋
東京都墨田区東向島2-4-8
03-3611-0163
開店時間/月~土 10:00am~5:00pm (第2・第3土曜・日曜・祝日休)
ホームページアドレス http://www.edokibashi.com/

墨田区が展開する3M運動の「小さな博物館」や「工房ショップ」は、ここにご紹介した以外にも、まだまだたくさんあります。たとえば、セイコーミュージアムでは日本の時計の歴史が、様々な貴重な展示でうかがい知れますし、新藤暦展示館では世界各国のカレンダーを見ることで、その国の文化がよくわかります(詳しくは1pからマップをご覧ください)。また工房ショップでは、愛着を持って長く使える日用品などさまざまなアイテムに出会えるかもしれません。ぜひ、気軽に墨田区を巡ってみてください。
次回も引き続き、墨田区に注目。「すみたモダン」認定商品に迫ります。お楽しみに。