刺繍職人

 どんな仕事?

一針一針丁寧に。日本刺繍の伝統技法で布を彩る

絹糸・金糸・銀糸など多種多様の糸を用いて、着物や緞帳(どんちょう)といった布類に刺繍を施す職人です。伝統技法は、実に15種類以上。点を表現する「相良繍(さがらぬい)」をはじめ、線を生みだす「まつり繍」、鎖状の模様をつくる「鎖繍」などのワザを使って、一針一針繍い上げていきます。繊細な刺繍は、着物地にとけ込み、まるで絵画のような雰囲気を創出。そこに、職人の個性と洗練されたワザが込められているのです。職人の温もりと美しい刺繍が融合してつくり出す糸の世界が、着物に優雅な味わいを与えます。

 こんな人に目指してほしい

色を見極める色彩感覚と丹念に繍い上げる根気が大切

糸と針で着物に美しい装飾を施したい人、一針一針の世界に一点モノをつくりたい人に向いています。帯で1ヶ月から3ヶ月、モノによっては1年以上かかるといわれるほど根気が必要な職業です。15種類以上の刺繍技法、10種類以上の針を使い分けて施された刺繍は、鮮やかの一言。また、糸の配色を自分で考えるため、色彩感覚やデザイン性も大切になります。着物類だけでなく、テーブルクロスやストールといった時代に合わせた刺繍を体得することで、仕事の幅が広がるでしょう。

 刺繍職人への道

京都府や石川県の産地へ。
10年以上かけて一人前に

伝統工芸品に指定されている京都府京繍と石川県加賀繍では、刺繍の教室を実施。基本的な知識を身につけることができます。また、刺繍店・工房への就職や刺繍職人への弟子入りで第一歩を踏み出せます。基礎技術の習得には最低3年、一人前になるのに10年以上かかるといわれているので、コツコツとワザを磨いていきましょう。

この職人がつくるモノ・コト 着物地、帯、袱紗、羽織、旗幕、緞帳、衝立、掛軸、装飾用額
このワザに関わる資格 染色技能士
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